一般財団法人不動産適正取引推進機構様の配信(2017.2.1)のメルマガより。

1.改正法における建物状況調査の実施方法について

(1)建物状況調査の対象部位及び方法
そもそも建物状況調査(インスペクション)は、売主・買主が安心して建物の取引の判断が行えるよう、建物の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分について、その状況を客観的に調査するものです。このため、建物の基本的な品質・性能に係る部位の状況を調査することが基本となります。このような建物の基本的な品質・性能に係る部位の調査については、平成25年に国土交通省が「既存住宅インスペクション・ガイドライン」として調査方法等に関する指針を定めているところで、改正法に基づく建物状況調査の実施方法についても、同ガイドラインに沿ったものとすることが適当であるとされました。
そして同時に、既存住宅の安心な取引環境を整備する観点からは、物件の引渡し後一定期間内に瑕疵が発見された場合について必要な補修が行えるよう、保険への加入を促進することが重要であり、建物状況調査を実施した場合にはその結果を活用して既存住宅売買瑕疵保険に加入することができる制度とすることが適当であるとしています。
したがいまして、改正法に基づく建物状況調査の対象部位及び方法は、国土交通省の「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を踏まえて、既存住宅売買瑕疵保険に加入する際に行われる現場検査の対象部位(基礎、壁、柱など)及び方法と同様のものとすることが適当とされているわけです。この基本的な考え方、対象範囲についてご理解をいただく必要があるかと思います。

(2)建物状況調査の実施主体
建物状況調査の結果は、売主・買主の双方にとって既存住宅の取引を行う上での重要な判断材料になるものでありますので、建物状況調査は客観的に適正に行われることが確保されなければなりません。このため、建物状況調査の実施主体として、
1) 建物の設計や調査に関する専門知識を有していること、
2) 適正な業務執行を担保するための指導・監督等の仕組みが制度上確保されていること、
3) 円滑に調査が行われるために必要な人員が確保されることが必要であるとされました。

現時点では、こうした要件を満たす主体としては建築士が挙げられるところでありまして、まずは平成30年春の施行に当たり、建物状況調査の実施主体については、調査に係る一定の講習を修了した建築士とすることが適当であるとされました。 なお、建築士は、国土交通大臣の免許を受けて建築物の設計、工事監理等の業務を行う者であり、建築物に関する調査について建築士法に基づく監督・処分等が可能です。現在、約18,000人の建築士が、国土交通省の「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に基づくインスペクションの講習を受け、インスペクターとして登録されています。一方、他の主体であっても、上記のような要件を満たして建物状況調査を客観的に適正に行える状況になれば実施主体となることは可能と考えられることから、安心な取引環境の整備を一層進める観点から、全国における建物状況調査の実施状況等を適切に検証しつつ、引き続き、建築士以外の主体による建物状況調査の実施を可能とする場合の枠組み等について、検討を継続するべきであるとの報告書がまとめられました。ここは是非注目いただきながら、他方で、建物状況調査の実施結果に関する客観性を確保する観点から、上記の講習を修了した建築士であっても、自らが取引の媒介を行う場合など当該取引に利害関係がある場合にあっては、売主及び買主の同意がある場合を除いて、建物状況調査の実施主体となるのは適当でないとされていますので、ご注意下さい。

2.建物状況調査等に関連する宅地建物取引業者の業務について

(1)建物状況調査を実施する者のあっせん
改正法においては、建物状況調査を活用した安心な取引が実現されるよう、宅地建物取引業者の業務の一環として、媒介契約において「建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項」を記載することが定められました。このような宅地建物取引業者によるあっせんは、売主等からのあっせんの希望を受けて複数の業者を順次あっせんする場合など、実務的には様々なケースが想定されるかと思います。このため、あっせん先の業者名等が変わるたびにその都度媒介契約を変更することになるのは適切でないと考えられることから、国土交通大臣が定める標準的な媒介契約書面である標準媒介契約約款においては、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項として「あっせんの有無」についてのみ記載することとするのが適当であるとされました。
なお、改正法に基づく「あっせん」は、建物状況調査を実施している業者に関する単なる情報提供ではなく、売主又は買主と業者の間で建物状況調査の実施に向けた具体的なやりとりが行われるように手配することが求められます。

(2)建物状況調査の結果の概要に関する重要事項説明

1) 重要事項説明の内容
建物状況調査の結果の概要に関する重要事項説明は、消費者利益の保護と既存住宅の取引の安全確保の観点から、既存住宅の取引を行おうとする買主等が、建物の現況を十分理解した上で意思決定できるようにするために行うものです。このため、重要事項として説明する建物状況調査の結果の概要は、客観的に適正な内容のものであることが重要であり、国土交通省の「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に基づく既存住宅現況検査結果報告書の検査結果の概要と同様のものとするべきであるとされています。
同時に、宅地建物取引士が重要事項説明に用いる建物状況調査の結果の概要の書面については、調査を実施した者が責任を持って作成することになります。

2) 重要事項説明の対象となる建物状況調査の範囲
建物状況調査の結果は、既存住宅を取引する上での重要な判断材料となるものであり、重要事項として説明する内容は、取引時点での建物の現況と大きく乖離しないことが求められます。既存住宅の安心な取引環境を整備する観点から、建物状況調査の結果を活用して既存住宅売買瑕疵保険への加入を促進する必要がありますが、既存住宅売買
瑕疵保険においては、建物への経年変化による影響等を考慮し、現場検査の実施から1年以内の住宅を保険引受けの対象としているところです。このため、重要事項説明の対象となる建物状況調査については、調査を実施してから1年を経過していないものを対象とすることが適当であるとされました。また、調査を実施してから1年を経過していない建物状況調査が複数ある場合には、取引物件の現況との乖離が最も小さいと考えられる直近の建物状況調査を重要事項説明の対象とするべきであるとされました。ただし、1年以内の直近の建物状況調査以外に、劣化事象が確認されている場合など、取引の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる建物状況調査を別途認識している際には、消費者の利益等を考慮し、宅地建物取引業法第47条に違反することのないよう、当該建物状況調査についても買主等に説明することが適当であると考えられます。また、建物状況
調査を実施してから1年を経過する前に大規模な自然災害が発生した場合など、重要事項説明時点での建物の現況が建物状況調査を実施した時点と異なる可能性がある場合であっても、自然災害等による建物への影響の有無及びその程度について具体的に判断することは困難であること、自然災害等が発生する以前の建物状況調査において劣化事象等が確認されていた場合などには、その結果が取引判断の参考になること等から、当該建物状況調査についても重要事項説明の対象とすることが適当であるとしています。

(3)「書類の保存の状況」に関する重要事項説明

1) 重要事項説明の対象となる保存書類の範囲
建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存状況に関する重要事項説明は、既存住宅の購入判断等に大きな影響を与えると考えられる一定の書類の保存の有無等について、買主等が事前に把握した上で取引に関する意思決定を行えるよう、新たに法に規定されたものです。既存住宅については、満たすべき建築基準への適合性が不明確である場合には住宅ローンの借入や既存住宅売買瑕疵保険の付保等が円滑になされない可能性があるほか、居住開始後に適切に既存住宅のリフォームやメンテナンスを行うためには、当該既存住宅の設計図書や新築時以降に行われた調査点検に関する書類などが必要となります。こうしたことから、建物の建築及び維持保全の状況に関し、重要事項説明の対象として保存の有無を明らかにする書類は、建築基準法令に適合していることを証明する書類、新耐震基準への適合性を証明する書類、新築時及び増改築時に作成された設計図書類、新築時以降に行われた調査点検に関する実施報告書類とするべきであるとされました。なお、区分所有建物のマンション管理組合など、売主以外の者がこれらの書類を保有している場合には、書類を実際に保有している者についても説明するべきであるとしています。

2) 貸借の場合における取り扱い
今般の法改正は、既存住宅の安心な取引環境を整備し流通を促進することを目的に行われたものであり、こうした観点から、書類の保存状況に係る重要事項説明の規定も整備されたところである。貸借では、売買に伴う既存住宅の流通とは異なり、借主による住宅ローンの借入やリフォーム等の実施は一般に想定されないところであり、貸借の場合においては、建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存状況についての重要事項説明の対象外とすることが適当であるとされています。

(4)37条書面への「当事者の双方が確認した事項」の記載
改正法第37条第1項に基づき売買契約等の成立時に契約当事者に交付する書面(以下「37条書面」という。)は、契約を媒介した宅地建物取引業者が当該契約の一定の事項を書面にすることで契約内容を明確にし、契約成立後の紛争を防止するこ
とを目的としたものです。今般、建物状況調査に関連して、37条書面に「建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項」を記載することが新たに定められています。構造耐力上主要な部分のひび割れや雨漏りなど、契約成立後のトラブル防止を目的に措置されたものですが、契約当事者が既存住宅の現況について不確かな認識をもとに37条書面に記載することは、かえってトラブルを引き起こす原因となりかねませんので、「当事者の双方が確認した事項」は、原則として、建物状況調査など既存住宅について専門的な第三者による調査が行われ、その「調査結果の概要」を重要事項として宅地建物取引業者が説明した上で契約締結に至った場合の当該「調査結果の概要」とし、これを37条書面に記載することとするべきであるとされました。また、これ以外の場合は、既存住宅の現況について当事者双方がどのような認識に基づいて契約を締結したかが明らかでないため、「当事者の双方が確認した事項」は「無」として37条書面へ記載することが適当であるとされました。
ただし、契約当事者の双方が写真等をもとに客観的に既存住宅の状況を確認し、その内容を価格交渉や瑕疵担保の免責に反映した場合など、既存住宅の状況が実態的に明らかに確認されるものであり、かつ、それが法的にも契約の内容を構成していると考えられる特別な場合には、当該事項を37条書面に記載することは差し支えないと考えられます。

3.売買等の申込みに関する媒介依頼者への報告について
取引物件に係る売買又は交換の申込みに関する報告は、宅地建物取引の透明性の向上を図る観点から、宅地建物取引業者による伝達を確実なものとし、媒介依頼者が適時かつ適切に物件の取引状況を把握できるようにすることを目的としたものです。このような目的を踏まえ、当該報告が実務上も適切に行われるようにするため、国土交通大臣が定める標準媒介契約約款を改正し、物件の売買又は交換の申込みがあったときは、媒介依頼者に対して遅滞なく報告することを宅地建物取引業者の義務として追加するのが適当であるとされています。なお、改正法に基づく「報告」は、買受申込書など、売買等の希望が明確に示された文書による申込みがあった場合に行うものとすることが適当であると考えられます。

4.改正法施行に当たっての留意点について
改正法施行に当たっては、建物状況調査等に係る新たな制度の趣旨・内容について広く周知徹底を図るとともに、関係者が改正法の内容を円滑かつ適正に実施できるよう、環境整備を行うことが重要であるとの指摘がされています。このため、国においては、上記を踏まえた関係省令等の整備を行うとともに、関係する事業者団体等と連携しつつ、改正法の施行に向けて次のような取組を行うよう検討を進めるべきであるとされました。

今後、以下の作業、公表等が政府によって行われるかと思います。ご確認下さい。
・建物状況調査、既存住宅売買瑕疵保険についてのパンフレット等の作成
・建物状況調査を実施する者の検索システムの構築
・改正法の内容に係るQ&Aの整備 等

また、関係省令等は、早ければ今月には明らかになるかと思われます。是非ともご確認いただき、適切な施行に向けてご準備をいただければと思います。

最後に、国土交通省の社会資本整備審議会産業分科会不動産部会においては、これらの改正事項の施行に向けた運用面の議論のほか、増大しつつある空き家等への対応、不動産業における情報化への対応、適正な不動産管理の推進などについて今後も議論が行われていく予定ですので、皆さんもどうぞご確認下さい。
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s203_hudousan01.html